【検証】「タッチ!カービィ」100%クリアに大スイッチは必要か?
この記事は、「タッチ!カービィ」の100%クリア条件を検証するために2022年1月に実施した配信に関して、検証を実施するに至った経緯や検証方法、検証結果等をまとめたものです。
目次
はじめに(検証に至った経緯)
「タッチ!カービィの100%クリア条件は何?」という質問に対して、タッチ!カービィを遊んだことがある人の9割程度は「メダルコンプリート」と答えると思います。
しかし、メダルを250枚集めてコンプリートしただけでは100%クリアにはなりません。何が言いたいのかというと、別の条件が存在するのです。
タッチ!カービィには「メダルチェンジャー」と呼ばれるモードがあり、このモードでは集めたメダルを様々な「ご褒美」と引き換えることができます。この「ご褒美」を全て引き換えることも、100%クリアの条件に含まれているのです。
私はこの第2の条件が存在することを、初めて100%RTAを走るにあたってのチャート構築の最中に気付きましたが、その時にふと思いました。
「他にも何か条件が存在するのではないか?」
そこで目を付けたものが「大スイッチ」でした。
「大スイッチ」とは、その名の通り大きなスイッチのことで、押すと他のステージのブロックが消えてその先にあるメダルを入手できるようになります。ゲーム内には3つ設置されていて、それぞれの色に対応したブロックが消えるという仕組みです。
[大スイッチの場所と対応するブロックの場所]
・3-1(橙) → 1-2、2-1
・5-1(緑) → 3-2、4-1
・7-1(青) → 5-3、6-1
話が少し逸れますが、タッチ!カービィの100%クリア条件であるメダルには、実は入手した瞬間にオートセーブされ、その後はステージをクリアせず退出してもメダルを入手した扱いになるという仕様があります。この仕様は大スイッチでも同様であり、大スイッチを押してステージ退出しても大スイッチを押した扱いになります。
押した瞬間にセーブされるくらい重要なフラグであれば、100%クリアの条件に含まれていても違和感は無いだろうと思ったのも、今回の検証のきっかけの1つです。
大スイッチはスキップ可能なのか?
この時点で、タッチ!カービィを100%クリアしたことがある人の9割程度は「大スイッチを押さずにメダルをコンプリートするのは無理だ」と思うでしょう。
たしかに、大スイッチを押していない状態だとブロックが通路を塞いでいて、メダルのある地点までたどり着くことができません。
ところが、このゲームには壁抜けバグが存在しており、このバグを活用すると通常では立ち入ることができないスペースに侵入することができるのです。
この壁抜けバグはTAS動画で大活躍していて、一度見たら忘れられない程のインパクトを誇っています。
「まだTAS動画を見たことがない」という方は以下の動画をご覧下さい。
[参考] タッチ!カービィ TAS動画(Any%)
※最初の1分までで大丈夫です
開始20秒で既にヤバさが伝わっていると思いますが、TAS動画ではこの壁抜けバグを使うことで、通常だとありえない速度でかつステージ構造を完全に無視した移動を実現しています。
補足:正確には壁抜けバグではなく「高速移動バグ」。速度が速すぎて壁の衝突判定を越えることで壁を抜けている。
しかしながら、このバグ技はピクセル単位・フレーム単位でタッチ操作を制御できなければ発動することができず、人力での再現は困難。ましてや連続での発動など到底不可能ですので、RTAでこのバグ技を利用する人は記事投稿時点で存在しません。
(もしこのバグ技を安定して発動する方法やセットアップなどを知っていましたら、私のTwitterに御一報頂けると有難いです。)
ですが、WiiUのVCメニュー開閉のポーズバッファを活用することで、人力でもある程度再現できるということが有志の研究によって判明しています。
[人力での壁抜けバグ発動の仕組み]
①ループを描き、カービィをループダッシュ状態にする
②VCメニュー開閉(ZRボタン)のポーズバッファを利用して「綺麗な直線」をループの先に描く
③タッチペンを離し、「綺麗な直線」の途中(ピクセルパーフェクト必須)から「短い線」を描く
④カービィが「短い線」に触れると、「綺麗な直線」の始点にものすごい速度で移動し、そこからループダッシュを再開する
⑤しばらく④を繰り返すと、時間経過で①~②で描いた虹が消えてくる
⑥「綺麗な直線」部分が消え始めると、カービィが「短い線」に触れて「綺麗な直線」の始点に移動しようとする際に、始点が存在しないためループダッシュを再開できず、かつて始点があった方向にものすごい速度で移動する
⑦このときの速度が一定以上だと壁に1~2ブロック分めり込む
⑧壁の中は上方向に押し上げる力がとても強いため、急上昇する
※このバグ技は人力だとWiiU(VC)版のVCメニュー開閉によるポーズバッファの使用が前提となるため、ポーズバッファ手段のないDS版での再現はほぼ不可能です。(通常プレイ中に偶発する可能性はあります)
もちろん、上記の方法を試したからといって確実にバグ技を発動させることができるというわけではありません。私はこのバグ技を長い間練習しているのですが、それでも10分間ひたすら挑戦し続けて1回成功するかしないかという具合です。
また、TASではあらゆる方向に吹っ飛んでいますが、人力だと吹っ飛ばせる方向は「右か左」に限られます。また、壁の中は上方向に押し上げる力がとても強く働いているため、壁の中にいる状態のカービィを制御するのは不可能に近いです。そのため、人力で可能な壁抜けは「2マス」が限界であり、それより分厚い壁の場合は途中で上方向に吹っ飛ばされてしまう点に注意しましょう。
なお今更で恐縮ですが、私はこのバグ技について完全に理解しているというわけではありません。もっと詳しく知りたいという方は以下の動画を参照して下さい。
[参考] タッチ!カービィ 壁抜けバグ解説動画(英語)
壁抜けバグに対する説明が長くなってしまいました。次の説明に移ります。
注意点ですが、この壁抜けバグを使っても全ての大スイッチをスキップすることはできません。
ここで、3つの大スイッチと対応メダルを順番に見ていきます。
[大スイッチの場所と対応するメダルの場所]
①3-1(橙) → 1-2(2枚目)、2-1(3枚目)
②5-1(緑) → 3-2(3枚目)、4-1(1枚目)
③7-1(青) → 5-3(3枚目)、6-1(2枚目)
①まずは、3-1にある橙色の大スイッチ。これに対応するメダルは1-2(2枚目)と2-1(3枚目)であり、この2枚のメダルについては壁抜けバグを使うと大スイッチを押さずとも入手することが可能です。
・1-2(2枚目)の入手方法
橙色の大スイッチブロックを壁抜けしてメダル入手。その後はポーズ画面からステージ退出
・2-1(3枚目)の入手方法
ゴール手前から壁抜けしてメダル入手。その後は穴に落ちて中間ポイントから再開し、ゴールへ向かう
②次に、5-1にある緑色の大スイッチ。これに対応するメダルは3-2(3枚目)と4-1(1枚目)ですが、この大スイッチはスキップできません。4-1(1枚目)では大スイッチを押した状態でないと別エリアへの扉判定が出現しないため、たとえTASであってもスキップすることは現時点で不可能です。
③そして、7-1にある青色のスイッチ。これに対応するメダルは5-3(3枚目)と6-1(2枚目)ですが、こちらは6-1(2枚目)について扉が邪魔で壁抜けのための十分なスペースを確保できないことから、大スイッチを押さずに入手することが困難となっています。(ブロックが3マス分と分厚いのも人力で困難な要因の1つ)
以上を踏まえて、今回の検証では3つある大スイッチのうち、押さなくても対応メダルを入手可能である3-1(橙)のみをスキップすることとします。
検証方法
今回の検証方法について確認します。
・本来は大スイッチを押して取るメダル2枚(1-2の2枚目、2-1の3枚目)を壁抜けで無理矢理回収
・3-1の大スイッチを無視して進行
・あとは普通にメダルコンプリートとメダルチェンジャー全開放を目指す
この状態でメダルコンプリートとメダルチェンジャー全開放を達成したとき、100%クリアになれば「大スイッチは100%クリア条件に含まれていない」とし、100%クリアにならなければ「大スイッチは100%クリア条件に含まれている」とします。
検証の流れ(100%RTAチャート紹介)
2022年1月に実施した検証配信では基本的に100%RTAで使用しているチャートをなぞりました。せっかくなので100%RTAの流れをここで軽く紹介します。
・メインゲーム 1周目
カービィでメインゲームの21ステージをクリアしたのち、ラスボスを倒します。各レベル毎にボスゲームも挟まります。Any%RTAとの違いはメダル入手と大スイッチを押すこと(今回の検証では橙色をスルー)ですが、メダルに関して、他のボールで入手した方がカービィよりも短時間で済むものはスルーします。ただし、1周目終了時点でメダル45枚が必要となるためスルーしすぎないようにします。
ラスボスのドロシアを倒したら、メダルチェンジャーで「デデデボール」と「メタナイトボール」を引き換えます。(メダル45枚必要)
(ここまでおよそ1時間5分)
・メインゲーム 2~4周目
ワドルディ、デデデ、メタナイトでメインゲームをクリアします。当然、全21ステージを3種類のボールでそれぞれクリアする必要があり、ラスボスも3種類のボールそれぞれで倒します。ボスゲームなしとはいえとても長く感じる区間ですので、ここを乗り切れるかが100%RTAの正念場と言っても過言ではないと思います。
ワドルディクリアで1枚、デデデクリアで3枚、メタナイトクリアで2枚メダルがもらえます。また、4周目をクリアしたら自動的に「ワドルドゥボール」で遊べるようになります。
(ここまでおよそ3時間47分)
・メインゲーム 5周目
ワドルドゥでメインゲーム21ステージをクリアしたのち、ラスボスを倒します。この5周目でメインゲーム攻略は最後となるので、ステージ内にメダルの取り逃しがないようにします。先ほどの2~4周目と比べると体感上あっという間に感じられる区間ですが、ダッシュ(ビーム発動)の度に鳴る効果音が騒がしいです。
ワドルドゥクリアで1枚メダルがもらえます。
(ここまでおよそ4時間42分)
・ゴールゲーム
メインゲーム5周クリアを達成すると、ゲームセレクト画面でゴールゲームを選べるようになるので選択。1500m地点に置かれているメダルを入手します。久しぶりにカービィを操作することになるので、感覚が狂って失敗することがよくあります。
・レインボートライアル (通常コース)
「タイムトライアル」と「ライントライアル」に挑戦します。タイムトライアルは、1つのエリアをどれほど早くクリアできるかを競うタイムアタックモードです。ライントライアルは、1つのエリアをどれほど少ないインク使用量でクリアできるかを競うモードです…が、RTAではタイムも重要になってくる都合上こちらも実質タイムアタックモードです。レインボートライアルではカービィ以外のボールも選択可能なので、挑戦するエリアそれぞれで有利に進められるようボールを使い分けます。
レベル1~7をクリアしたら、メダルチェンジャーで「SPコース(8つ)」と「ライフアップ(3つ)」を引き換えます。
・レインボートライアル (SPコース)
メダルチェンジャーで引き換えたSP(スペシャル)コースで引き続きタイム&ライントライアルに挑戦します。通常コースとは違い、カービィ以外のボールが選択できない上に、ステージによってコピー能力が指定されています(解除不可・被弾しても消えない)。また、通常コースに比べてメダル入手のノルマが厳しく、難易度が高いです。
SPコースを制覇したら、メダルチェンジャーの残り全てを引き換えます。
(ここまでおよそ5時間27分)
・サブゲーム
Lv1やLv2と比べると圧倒的に難易度が上昇しているサブゲームLv3でAランク以上の獲得を目指します。正直、このサブゲームLv3のRTAをしたいがために約6時間もかけて100%RTAを走っているといってもあながち間違いではない、そのくらいお気に入りの区間です。ブロックアタックではスコア35000点を越えたら自滅、トロッコチェイスではスコア48000点以上でゴール、ペイントパニックではスコア35000点を越えたら自滅します。
(100%RTAの自己ベスト:5時間45分8秒)
[参考] タッチ!カービィ 100%RTA 5時間45分8秒
検証結果
大スイッチを1つ押していない状態で、メダルコンプリート&メダルチェンジャー全開放を達成した結果…
100%クリア画面が表示されました。
つまり、「大スイッチを押すことは100%クリアのための必須条件ではない」ことが証明されました。
これにより、大スイッチはあくまで「メダル入手のための手段」であって、大スイッチを押すこと自体は100%クリアのためのフラグとはなっていないことが確定しました。
この検証が何の役に立つのか?
最後になりましたが、今回の検証結果が果たして何の役に立つのかを説明しておきます。
まず1点目は、このゲームの100%クリア条件をはっきりさせることができたという点です。
検証前までは、100%クリア条件に大スイッチが必要かどうかは不明瞭であり、「もしかしたら大スイッチも100%クリア条件に含まれているかもしれない」という曖昧な状態でした。
ですがこれからは、「タッチ!カービィの100%クリアの条件は何?」と聞かれた際に、胸を張って堂々と「メダルコンプリートとメダルチェンジャー全開放だよ」と答えることができるようになりました。
そして2点目は、100%TASを制作するにあたって1,3つ目の大スイッチを押す必要がなくなった、という点です。
補足:3つある大スイッチのうち2つ目(緑)に関しては、押さなければ4-3で扉判定が出現せずメダル入手できないため、TASでもスキップ不可。
ここでRTAではなくTASと言ったのは、もちろん人力では壁抜けバグが安定しないからです。1発か2発で成功できるならば大きな短縮が見込める壁抜けですが、私の実力では10分間挑戦して1回でも成功したらマシという程度なので実践投入は今のところ厳しいです。
ただ、これから先、人力でも簡単に安定して壁抜けできるようなセットアップが見つかるという事態が起きれば、RTAでも壁抜けバグの使用が当たり前になるという日が来るかもしれません。その暁には、100%RTAで1,3つ目の大スイッチがスキップされることになるでしょう。
ちなみに私は、TAS制作のための知識も意欲も残念ながら持ち合わせていません。そのため、この記事が今後タッチ!カービィ100%クリアのTAS動画を作ろうと考えている方の参考になれば幸いです。
終わりに
最後までご覧頂きありがとうございました。
次の検証記事のテーマは、"「あつめて!カービィ」レベル4クリアまでのRTAチャートの考察"を予定しています。(検証時期、投稿日未定)
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参考URL
・タッチ!カービィ (WiiU VC版) - 任天堂公式サイト